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Home ドキュメント Virtual Private Gateway (VPG) オプション機能

SIM ベースルーティングを利用する

一般に、「IoT SIM を利用するルーター」の配下のネットワーク (以下、ルーターの LAN) に所属するデバイスに、ルーターを越えてアクセスするには、ルーターにおいてデバイスごとにポート転送設定やトンネル接続設定を行う必要があります。しかしその方法では、ネットワーク設計が難しい、特定の通信プロトコルが利用できない、などの制限がありました。

VPG の SIM ベースルーティングを利用すると、ポート転送設定やトンネル接続設定をすることなく、ルーターの LAN の IP アドレスレンジに対して、ルーターで使用する IoT SIM を紐づけるだけで、ルーターを越えてアクセスできます。

アクセスできる対象は、以下のとおりです。

  • SORACOM Gate D2D を利用する場合は、同じ VPG に所属する IoT SIM を利用するデバイス
  • SORACOM Gate C2D を利用する場合は、お客様のネットワークに設置されているホスト (Gate Peer)

Gate D2D と Gate C2D を利用する例:

SIM ベースルーティングの指定の例 SIM ベースルーティングの指定の例

上記の設定例の場合は、以下のような方法でアクセスできます。

  • Gate Peer から、ルーター #1 の LAN に所属するデバイスに、プライベート IP アドレス (例: 192.168.100.123) を指定してアクセスする。
  • IoT SIM #3 を利用するデバイスから、ルーター #1 の LAN に所属するデバイスに、プライベート IP アドレス (例: 192.168.100.123) を指定してアクセスする。
  • IoT SIM #3 を利用するデバイスから、ルーター #2 の LAN に所属するデバイスに、プライベート IP アドレス (例: 192.168.200.45) を指定してアクセスする。
カバレッジタイプを超えてサービスを利用することはできません

グローバルカバレッジと日本カバレッジでは、ほぼ同じ内容のサービスを提供していますが、完全に分離されています。そのため、カバレッジタイプ を超えてサービスを利用することはできません。たとえば、グローバルカバレッジの SORACOM IoT SIM を利用している IoT デバイスと、日本カバレッジの特定地域向け IoT SIM を利用している IoT デバイスでは、SORACOM Gate D2D によるデバイス間通信はできません。

ルーターの LAN に所属するデバイスにアクセスする際、NAT (Network Address Translation) は行われません。そのため、NAT が行われると利用できない通信プロトコルも利用できます。

操作を始める前に準備が必要です (クリックして確認してください)

(1) IoT SIM を準備する

複数の IoT SIM を利用する場合は、同じカバレッジタイプの IoT SIM を準備します。詳しくは、SORACOM の利用を始める を参照してください。

(2) IoT SIM を利用するルーターを準備する

IoT SIM を利用するルーターは、以下の設定に対応しているデバイスを利用してください。

  • 外部から着信を許可する
  • 外部からの着信をプライベート IP アドレスに転送する

ソラコムでは、Teltonika RUT240産業用 LTE Wi-Fi ルーター UD-LT2 で動作することを確認しています。

準備完了

ステップ 1: ルーターの設定を変更する

SIM ベースルーティングを利用するには、IoT SIM を利用するルーターに「ルーターの WAN 側に接続されている SORACOM から届いたパケットを、宛先 IP アドレスとポート番号を書き換えずに、ルーターの LAN 側に転送できる機能」が必要です。また、ルーターにファイアウォール機能がある場合は、利用するポートのアクセスを許可してください。たとえば、Teltonika RUT240 (以下、RUT240) の場合は、以下のように設定します。

RUT240 以外のルーターでも利用できます

SIM ベースルーティングは、たとえば、産業用 LTE Wi-Fi ルーター UD-LT2 でも利用できます。

  1. RUT240 の Web UI (デフォルトでは http://192.168.1.1) にログインします。

    RUT240 のセットアップについて詳しくは、産業用 LTE ルーター Teltonika RUT240 をセットアップする を参照してください。

    このページでは、以下のように LAN 側の IP アドレスを「192.168.100.1」、DHCP の IP アドレスの範囲を「192.168.100.100」~「192.168.100.254」に設定したものとして説明します。

    項目説明
    [IPv4 address]「192.168.100.1」を入力します。
    [Start IP]「192.168.100.100」を入力します。
    [End IP]「192.168.100.254」を入力します。

  2. [Advanced][Network][Firewall][General Settings] の順にクリックします。

  3. [General Settings][Forward] で「Accept」を選択します。

  4. [SAVE & APPLY] をクリックします。

  5. 任意のデバイスをルーターの LAN に接続します。

    このとき、このデバイスのネットワーク設定画面などで、デフォルトゲートウェイとして、ルーターの LAN 側 IP アドレスを設定してください。LAN 側 IP アドレスは、手順 1 で [IPv4 address] に入力した値です (例: 192.168.100.1)。

設定が正しいことを確認してください

ここまでの設定が正しく完了していると、ルーターの LAN に接続したデバイスで、SORACOM の PING 応答サービス を利用して、SORACOM にアクセスできることが確認できます。

$ ping -c 4 pong.soracom.io
PING pong.soracom.io (100.127.100.127) 56(84) bytes of data.
64 bytes from 100.127.100.127 (100.127.100.127): icmp_seq=1 ttl=64 time=96.8 ms
64 bytes from 100.127.100.127 (100.127.100.127): icmp_seq=2 ttl=64 time=98.1 ms
    :

ステップ 2: VPG Type-F を作成してデバイス間通信 (Gate D2D) を有効化する

ここでは、SIM ベースルーティングを利用するために VPG Type-F を作成して、Gate D2D を有効化します。

  1. 利用する IoT SIM と同じカバレッジタイプの VPG Type-F を作成 します。

    「VPG を追加」画面では、以下の設定に注意してください。それ以外の項目については、このページの説明には影響がありません。適宜設定を行ってください。

    項目説明
    [名前]任意の名前を入力します。例: SIM ベースルーティング VPG
    [VPG タイプを選択してください]「Type-F」を選択します。
    [デバイスサブネット IP アドレスレンジ]ルーターの LAN の IP アドレスレンジ (例: 192.168.100.0/24) を含めないでください。この後に設定する SIM ベースルーティングの [ルーティング設定] では、[デバイスサブネット IP アドレスレンジ] と一部でも重なる IP アドレスレンジは指定できません。

    VPG Type-F が作成されます。

  2. IoT SIM がここで作成した VPG を利用するように設定します。

    詳しくは、IoT SIM が利用する Virtual Private Gateway (VPG) を切り替える を参照してください。

    バーチャル SIM/Subscriber でデバイス間通信 (Gate D2D) を利用する場合は追加の設定が必要です

    Arc のバーチャル SIM/Subscriber を利用するデバイスで Gate D2D を利用するには、以下のいずれかに、VPG の [デバイスサブネット IP アドレスレンジ] (デフォルトでは 10.128.0.0/9) と、ルーターの LAN の IP アドレスレンジ (例: 192.168.100.0/24) の値を指定してください。

    なお、[デバイスサブネット IP アドレスレンジ] は、VPG 設定画面で確認できます。詳しくは、VPG の設定を変更する を参照してください。

  3. Gate を有効化して、同じ VPG を利用するデバイス間で通信できることを確認します。

    詳しくは、「デバイス間で通信する (SORACOM Gate D2D)」の ステップ 2: Gate を有効化する を参照してください。

ステップ 3: クラウドからデバイスへの通信 (Gate C2D) を有効化する

クラウドからデバイスへの通信 (Gate C2D) を利用しない場合はステップ 4 に進みます

Gate C2D を利用しない場合は、この手順は必要ありません。ステップ 4: SIM ベースルーティングを有効化する に進みます。

VPG Type-F は、デバイス間通信 (Gate D2D) に加えて、お客様のネットワークからデバイスへ直接アクセスする機能 (Gate C2D) も利用できます。Gate C2D を利用する場合は、Gate C2D を有効化してください。

Canal と Gate を組み合わせる手順について詳しくは、クラウドからデバイスへアクセスする (SORACOM Gate C2D) を参照してください。

なお、Gate Peer からルーターの LAN に所属するデバイスにアクセスするには、Gate Peer に、ルーターの LAN の IP アドレスレンジ (例: 192.168.100.0/24) に対して、[VPG の Gate Peer 一覧][デバイスサブネット内 IP アドレス] をゲートウェイとして、vxlan0 インターフェースを通じてルーティングする設定を追加します。

具体的には、Gate Peer で以下のコマンドを実行します。

例:

$ sudo ip route add 192.168.100.0/24 nexthop via xxx.xxx.xxx.xxx weight 1 nexthop via yyy.yyy.yyy.yyy weight 1 dev vxlan0
  • 192.168.100.0/24 には、ルーターの LAN の IP アドレスレンジを指定します。
  • xxx.xxx.xxx.xxx には、[VPG の Gate Peer 一覧][デバイスサブネット内 IP アドレス] の 1 件目の IP アドレスを指定します。
  • yyy.yyy.yyy.yyy には、[VPG の Gate Peer 一覧][デバイスサブネット内 IP アドレス] の 2 件目の IP アドレスを指定します。

ステップ 4: SIM ベースルーティングを有効化する

  1. SIM ベースルーティングを有効化する VPG の VPG 設定画面で [デバイス LAN 設定] をクリックします。

  2. [SIM ベースルーティング][ルーティング設定][+追加] をクリックして、以下の項目を設定します。

    項目説明
    [IP アドレスレンジ]

    ルーターの LAN の IP アドレスレンジを CIDR 表記で入力します。

    • 1 つの SIM ID に対して、1 つの IP アドレスレンジを指定してください。1 つの SIM ID に対して、複数の IP アドレスレンジは指定できません。

    • 登録可能な IP レンジは、クラス A ~ クラス C のプライベート IP アドレスの範囲です。ただし、ステップ 2: VPG Type-F を作成してデバイス間通信 (Gate D2D) を有効化する で設定した [デバイスサブネット IP アドレスレンジ] と一部でも重なる IP アドレスレンジは指定できません。

    • 複数の SIM ID を指定する場合、指定できる IP アドレスレンジには制限があります。

      • 無効な設定例

        複数の SIM ID に対して、同一の IP アドレスレンジ (192.168.100.0/24) が指定されています。

      • 有効な設定例 (IP アドレスレンジが重複する例)

        この場合は、ルーティングはロンゲストマッチで動作し、最も詳細に指定されたルーティング設定 (最も長いサブネットマスクを持つルーティング設定) が採用されます。具体的には、以下のように設定した場合、192.168.100.241 宛のトラフィックは xxxxxxxxxxxxxxxx415 にルーティングされます。

      • 有効な設定例 (IP アドレスレンジが重複しない例)

    [SIM ID]

    ルーターで利用する IoT SIM の SIM ID を入力します。IoT SIM の SIM ID や名前の一部を入力すると、SIM ID の候補が表示されます。

    バーチャル SIM/Subscriber は利用できません

    ルーターで利用する IoT SIM の代わりに、バーチャル SIM/Subscriber を利用することはできません。

    IoT SIM に セカンダリサブスクリプション が追加されている場合、SIM ID の候補として同じ SIM ID を持つセカンダリスクリプションも表示されます。SIM ベースルーティングは、SIM ID で IoT SIM を区別するため、SIM ID が一致していればどちらのサブスクリプションを選択しても正しく動作します。

    • [削除] をクリックすると、その行を削除できます。
    • [所有していない SIM の登録を許可] にチェックを入れると、異なるオペレーターが所有する IoT SIM の SIM ID も入力できます。たとえば、IoT SIM をほかのオペレーターへ譲渡 (移管) する の手順に従って IoT SIM を譲渡する際、[所有していない SIM の登録を許可] にチェックを入れると、譲渡が完了する前に SIM ベースルーティングを設定できます。
  3. [保存] をクリックします。

  4. [SIM ベースルーティングを有効にする] をクリックします。

  5. [OK] をクリックします。

    SIM ベースルーティングが有効化されます。

  6. [ルーティング設定] に登録した IoT SIM のセッションを再確立します。

    詳しくは、IoT SIM のセッションを再確立する を参照してください。

数十秒程度の通信断が発生します

SIM ベースルーティングの設定を変更する際に、VPG に所属するすべての IoT SIM において数十秒程度の通信断が発生します。

バーチャル SIM/Subscriber を利用するデバイスで、ルーターの LAN に所属するデバイスにアクセスする場合は追加の設定が必要です

Arc のバーチャル SIM/Subscriber を利用するデバイスで、ルーターの LAN に所属するデバイスにアクセスする場合は、以下のいずれかに、[SIM ベースルーティング][ルーティング設定][IP アドレスレンジ] に入力した IP アドレスレンジ (例: 192.168.100.0/24) を指定してください。

SORACOM CLI / SORACOM API の場合

SORACOM CLI または SORACOM API も利用できます。

ステップ 5: IoT SIM に SIM ベースルーティングの設定を反映する

SIM ベースルーティングの設定変更を反映するために、VPG に所属するすべての IoT SIM のセッションを再確立します。VPG 設定画面の [基本設定][この VPG を利用しているグループ] に表示されている SIM グループを確認し、その SIM グループに所属するすべての IoT SIM のセッションを再確立してください。

詳しくは、SIM グループに所属するすべての IoT SIM のセッションを再確立するには を参照してください。

設定が正しいことを確認してください

ここまでの設定が正しく完了していると、ステップ 2: VPG Type-F を作成してデバイス間通信 (Gate D2D) を有効化する で作成した VPG を利用するデバイスは、お互いに通信できます。一方のデバイスから、もう一方のデバイスのプライベート IP アドレスに対して通信を行い、疎通を確認してください。このとき、デバイスがルーターの LAN に所属するデバイスのプライベート IP アドレス (例: 192.168.100.123) を指定してもアクセスできます。

SIM ベースルーティングの利用を終了するには

SIM ベースルーティングが不要になった場合には、以下のいずれかの操作を行います。

SIM ベースルーティングを無効化する

SIM ベースルーティングを無効化すると、ルーターの LAN に所属するデバイスに、プライベート IP アドレス (例: 192.168.100.123) を指定してアクセスできなくなります。この方法の特徴は、以下のとおりです。

VPG の利用料金は継続して発生します

VPG を削除するまでは、VPG の利用料金が発生します。不要になった VPG は速やかに削除してください。VPG の利用料金について詳しくは、Virtual Private Gateway のご利用料金 を参照してください。

SIM ベースルーティングの設定を変更する際に、VPG に所属するすべての IoT SIM において数十秒程度の通信断が発生します。

  1. SIM ベースルーティングを無効化する VPG の VPG 設定画面で [デバイス LAN 設定][SIM ベースルーティング][SIM ベースルーティングを有効にする] をクリックして、無効化します。

  2. [OK] をクリックします。

    SIM ベースルーティングが無効化されます。

SORACOM CLI / SORACOM API の場合

SORACOM CLI または SORACOM API も利用できます。

Gate を無効化する

Gate の機能を使わないときには Gate を無効化できます。詳しくは、Gate を無効化する を参照してください。

VPG の利用を終了する / 削除する

詳しくは、VPG の利用を終了する / 削除する を参照してください。